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問題、問い、我彼

熊野調査から1夜明ける。
あさってにはもうフィリピンに出発することに気づき愕然とする。
のろのろと準備をしながら、熊野を振り返り、少し逃避してみることにする。

僕は、フィリピンでおもにフィールドワークをしている。
いわば、海外フィールド中心の人類学者。
それだけに、日本での調査は(言葉が通じるというだけではなく)いろいろな意味で新鮮な発見がある。

よく言われるのは(そして自分でもそう思うのは)、海外フィールドでは甘やかされるということ。
人類学者が行くフィールドはおもに第三世界であることも関係して、外国人調査者は大事にされることが多い。
実際、欲しいなと思った情報にたどり着けないことはめったにない。アポなしで訪ねても、丁寧に対応してくれる場合がほとんどだ。

日本の調査では、そうもいかない。
人脈作りやアポ取り、聞いていいこといけないこと、お礼など、(当たり前なのだが)必要なプロセスがしっかりとある。そういう当たり前のことは、しかし海外フィールドで甘やかされたこの身にとって、少し大変に感じるといったら怒られるだろうか。

で、そういうわかりやすい違いとは別に、今回はもう1つ別の違いに気づいた。
それは、「問題」と「問い」の差とでも表現したらいいだろうか。

今回の熊野調査で、一緒に回った学部生たちがおもに直面していたのは、環境や高齢化、まちおこしといった調査地の人々にとっての「問題」であった(もちろん社会学の実習であったことも関連しているかもしれないが)。
そういう調査地の「問題」についての語りを聞いた学生たちは、それらをコード化して自分たちの調査における「問題」として設定する。例えば、地域の高齢化に伴い元気がない。ではどうやって活気のあるまちづくりをすればよいのか。つまり、そこには、調査地の問題と調査者の問題のあいだの奇妙な相似がある。

「奇妙」というのは、もちろん僕にとって「奇妙」にみえるということだ。
(説明するといつも不思議な顔をされる)僕のフィリピンでの呪術や民間信仰についての調査では、調査地の問題と僕の問題には距離がある。僕にとって、フィリピンの人たちの「問題」である、「どうしたら呪われないか?」とか「どうしたら精霊の怒りを静めることができるのか?」という問題は、なかなか共有することは難しい。僕が「フィリピンにおける呪術問題の解決に向けた提言―対抗呪術知識の初等教育における普及という観点から」という論文書いたらおかしいだろ、やっぱり。

でも、「三重県熊野市における人口減少と地域活性化」について書かれた論文には違和感を感じないのは、僕だけだろうか。

では、呪術が僕にとっての「問題」となりづらいのであれば、一体何をしているのか。
それが今明確に答えられれば博士論文の3割はできたも同然なのだが、「徹底的に理解できない他者と自己の間に通じるもの、あるいはその他者がたち現れてくる関係性のありよう」、とでもいえるだろうか。
よりわかりにくい補足をすれば、それは調査者と調査地の人々のあいだにも、調査地の人々同士のあいだにもあるものである。それがフィリピンの呪術から立ち上がった僕の「問い」。

逃避で、こういう大事な思索をはじめるのはよくない。
だんだん、わからなくなってきた。

彼らの「問題」と我々の「問題」が同じように見えるとき、はたして我々と彼らの関係はどうなっているのか?
彼らの「問題」から僕が「問い」を導くとき、その差異は何を生み出し破壊するのか?
日本の調査地の人々は、フィリピンの調査地の人々と何が違うんだろう/同じなんだろう?

大体こんなことを考えたという道筋だけ示すと、僕はいつもたいした思考をしていないということ、それはよくわかる。


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Comments

あー、わかるよ。

いや実にツマンナイ書出しですな、はじめまして。

一般的には調査対象と調査者の「問題の認識」に差があることはいけない。
「問題の認識」と「目標の解決」をつなぐ方法・手段は、そう何通りも試せる訳じゃなく、ひとつの方法が様々な問題に対して様々な解決を提示してくれる可能性は極めて低いと考えられるから。
(でも、実際こういう美味しいことも現実には多々あるから間違うんだけど)


>奇妙な相似
というのは、おまえらホントにそのことを問題だ!って認識したのか?地元がそういってるから、社会的にコンセンサスを得ている思考の流れに乗っかっているだけじゃないか?
「なんとこれで活性化大成功案だ!」というのを「いや単位取得だ」といわれては、ぶー。
(でも、どっちもどっち)


文章にすると凝り固まってしまうけど、もっと曖昧、もっと行間を読んで!、イメージだけならもっとあーでこーで、あー、うまく言えない!!
(学術論文はハッキリさせることが目的だから)

って感覚で、んーなんかわかるよって、感じ。


>海外フィールドでは甘やかされる
問題意識の違和感・差異を判っていながら、甘やかされてはマズイじゃん。アナタは何も還元しない。だけでなく後進の邪魔をすることにだって繋がる。もしくは、後進の困難を極めた目標達成時のなにかしらのエピソード?

Posted by: -den | September 25, 2004 05:28 PM

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