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アンチ天才クイズ

Kさんが送ってくれた修士論文を読んだ。

他者に対して、向き合いもしないがよそも見ないという斜めな姿勢を保っている僕には、彼女の誠実な姿勢が強く伝わりすぎて、読みながら時に涙がこみ上げてくるほどの力作だった。政治学と人類学はディシプリンとして別の範疇にあるのだろうが、そして同じフィリピンがフィールドでも彼女のマニラのスラムと僕の地方都市ではずいぶん空気が違うのだろうが、熱いものは熱い。Kさん、元気をありがとう。

最近特に、"I am better than you are"的な研究世界の雰囲気に食傷気味で、それでも周りにそういう人が少ない幸運に救われている自分がいる。そりゃ、確かに研究というのは一生懸命思考しなければ成立しない実践だろう。でも、ハイパーな理論構築とかクリアな論旨というのは、もともとそれ自体が目的ではなかったはずだ。頭の良さを競い合うだけなら、天才クイズに出場して天才賞を取るのを目指していればいい。

たとえばどんな映画も、その技術や手法、モチーフなどについて批評家的に鑑賞することは可能だろうし、またある程度はそれが必要な行為でもある。でも、僕は観る映画全部批評家的に観ていたら疲れてしまうし、たまには、というよりいつも、心を突き動かしてくれるような何かを感じることで満足していたい。

僕にとっての研究活動もそういうものでありたいと願う。それは、頭をぐるぐる回し続けることを否定しているのではもちろんなくて、そういう知的な実践の果てに、誰かに伝えたい想いや願いが放たれて届いて受け取られることへの追求だ。踊れないし、歌えないし、走れないし、もう芝居もやめてしまったけれど、僕は僕に幸運にも与えられた(と信じたい)ささやかな脳みその回転力を最大限に活かして、この体の中にくすぶり続ける熱さを世界に表現していきたい。

というわけで、最近それぞれタイプの異なる熱い研究者たちとの出会いに恵まれすぎている僕は、ある先生に「君の長所であり最大の弱点でもある」と評されてしまった部分を歯止めなく伸ばして磨いで鍛えていくのだと思う。それは、あいかわらずマイナスの方向なのかもしれないけれど。

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