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忘却まで

研究会後、岡山を1時過ぎに出て、4時過ぎには自宅に到着。新幹線ってなんて便利なんだろう。研究会はいつもどおり最高に刺激的だったのに加え、ちょっと大変な宿題を個人的に抱えてしまった。当たり前だけど、研究って、厳しい。

夜。電話が鳴る。63から始まる番号表示は間違いなくフィリピンから。出ると、滞在先からだった。「元気?いつ帰ってくるの?」って。そうやってたまに気にかけてくれることが、とてもうれしい。でも、つらかったのは言葉が出てこないこと。当然の事ながら、全然使っていないイロンゴを僕は忘れてしまっている。

こうやって、次第に時間が経っていくにつれて、僕はあれほど苦労して覚えたあの言葉を忘れていくのだろうか。試験に受かるためでも、教養のためでもなく、そこにいる人たちに少しでも近づき、仲良くなって、意思疎通して、理解する/しあえるために学んだ言葉。

たどたどしく、何とか電話を終えた後、以前飛行機の中で見た「きみに読む物語」を思い出す。アルツハイマーによる忘却から時々だけ記憶を取り戻し愛し合える妻。しかし、次の瞬間には、妻は自分のことを忘れてしまう。

でも僕の場合、時が経つにつれて言葉は失ってしまうかもしれないが、あの人たちのことを忘れないでいることはできる。そして、またあの人たちに会いに行って言葉を取り戻す事だってできる。生きている限り、想っている限り、完全なる断絶が訪れないという希望の方に今は身を寄せていたい。

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