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知識について

ここ1週間ほど、何人かを巻き込みながら考えていたのは、教育や知識を獲得することとその使い方について。飽きっぽい僕は、もういいかな、と思っていたが、少し面白い文章を見つけたので。

D だったらその測り方で知識を測ってもいいんじゃない?
F テストでか?そうはいかん。とんでもない話だ。さっき、知識の中には色々違った種類があるって言っただろう?知識についての知識というものもあるんだって。そういう肝心かなめのポイントを、ペーパー・テストは全く無視して点数を出しているじゃないか。
(ベイトソン、2000、「知識の量を測ること」『精神の生態学』pp.62-69)

父娘の会話で進められるこの短い文章はお勧め。こんな会話のできる親子になりたいな。

さて、「知識」と「知識についての知識」の差異について。例えば僕が学んだAという知識とBという知識は、ペーパーテストで出題されればともに3点ずつのものだったとしよう。しかし、実際の運用実践においては、ある事象を分析するのに、Aを先に用いるか、Bを先に用いるかでその分析の正確さや精度、あるいは正誤まで変わってくる場合がある。つまり、いかに学んだ知識を運用するかというメタ知識、それが「知識についての知識」と僕は解釈する。

そこまで考えれば、机と本にかじりついて勉強ばかりしているナードなタイプが、現実では得た知識を利用できないというステレオタイプ化された状況を、「知識についての知識」の欠如として言い表すことができるかもしれない。でも、僕は、そこまでではつまらないし納得がいかない。ここまでを「知識についての知識」(その1)としておこう。

僕が、「知識についての知識」を考える際、どうしても含みこませておきたいファクターとは、知識を使用する際の倫理のようなもの。より効果的に実践的に知識を運用することとは別に、知識の運用という行為自体にどのような政治性が埋め込まれているのか。そのことに繊細であること、そしてもっとシンプルには、他者に対して自分の恋人に接するように優しくあるように、知識を用いること。それを「知識についての知識」(その2)と名づける(最近僕は、その1、その2が大好きだ。そしてその後に何が来るか、僕のワンパターンの思考をよくご存知の方は読まなくてもいいです…)。

以上の(その1)と(その2)は換言すれば、それぞれ技術と倫理の問題系に分類することができるだろう。とっても上手に、とっても正しく知識を運用する「知識についての知識」を完全に身に着けたること、それが僕たちの究極の目標だ…。

違う。技術と倫理を完全に身に着けて、知識を最大限に効果的に、そしてだれからも文句が言われないように使った時、それはむしろ知識の独裁者になることを意味するのではないか?そういうパーフェクトな「知識についての知識」を志向するとき僕は、「知識についての知識についての知識」をどこかで欠落させてしまっているのではないか。

例えば、フィリピンでフィールドワークを開始した頃、赤ん坊に限りなく近い語彙しかなかった僕には、日々シンプルな言葉を覚えていくことがとても刺激的だった。"ido"が「犬」を意味していることを知り、おなかがすいたの時に"makaon"(「食べる」)って伝えた時。そういう、技術的にも倫理的にもあやふやな状況で、すなわち「知識についての知識」(その1)も(その2)も未修得の段階で、それでも不確定だからこそ感じることができる学ぶことの幸福感があった。有名な、ヘレン・ケラーの逸話、ポンプから流れる水を触れて肌で感じて、初めて「水」という言葉の意味を知ったという場面を思い出してもらってもいい。

知識を得ることのリアルとでもいおうか。技術的にでも倫理的にでもないけれど、それも重要な「知識についての知識」だと主張したい。というわけで、それを「知識についての知識」(その3)ということにする。どうも、学歴社会の中に十全に埋め込まれてしまっている僕たちには(その3)が分かりづらいから、すぐに知識についての単面的な議論に飲み込まれてしまうけど、本来知識とは社会的な地位を上昇させるのかどうか、またそれがいいのか悪いのかという文脈とは別なところにあったのではないだろうか。

どこまでできるかわからないけれど、自分はそういうことを考えながら、講義の中で知識を売っていけたらなと思っている。

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Posted by: milsos.com | April 26, 2014 05:52 PM

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