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暗黙知

遊んで朝帰ってきて自転車をこいでいる時に、常連のコーヒー屋さんのおじさんが早起きで外に出てくる。「おはようございます」と挨拶を交わすのが、少し気まずい。そういえば、隣の人にまじめに「なんの仕事しとるの?」と名古屋弁で聞かれたこともあるし。

非常勤の準備で、いくつか文献をあたる。非言語の領域は、これまであまり自分で扱ったことは無かった。フィールドでは、自分の気持ちや行動をよく言語化する再帰的な人たちが多かった気がするし、また自分も全て言語化しないと気がすまない性格だから。

「科学についての通俗的な見解によれば、科学とはあらゆる人が自分で検証することのできる観察可能な事実の集合である、と説かれる」(ポラニー、『暗黙知の次元』

上の見解は真実ではないとポラニーは言う。まず、検証可能な器具が手に入らない。もし使えても、うまく使えずに壊してしまうだろう。さらにもし反証できてしまった場合であっても、まず自分の結果の方を疑うだろう。たしかに。だから科学は暗黙の権威の了解を根拠にしているということらしい。と同時に、その暗黙知こそが新たな科学的創造の源泉。

フィールドワークを考えれば、当たり前な話だ。まず、同じフィールドにいかない/いけない。行っても言葉が話せない。もう同じインフォーマントはいないかもしれない。言葉が話せるようになったとしても、前のフィールドワーカーと同じ関係性なんてもてっこない。検証可能なのは、実験やフィールドワークの過程というよりも、論理構成のような気がする。

すると、やはりエスノグラフィーの価値とは、その真実性や検証可能性よりも、扱っているテーマの興味深さや問題が訴えかけるさまなのだろうか。だから何でもありというわけでは、もちろんないのだろうけれども。そういうインパクトのようなものを見抜いて世に問うセンス。方法論の教科書には決して載っていない暗黙知の重要性。自分だってよく分からないのに、そんなの教えられるわけないじゃん。っていうか、「非言語コミュニケーションを教える」ということ自体が、矛盾に思えてきた。

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Comments

たびたびすみません。しかしazuma氏だって、ちゃんとフィールドワークやってるじゃない。それは誰かに教わったんでしょうから、それと同じように教えればよろしいのではないでしょうか。ぼくも工場歩きは師匠にひたすら現場を連れまわされてやっと身についてきたように思います。まあ、それだけやっても結局フィールドワーカーはみな独特で、一人一派だというのもそうだと思いますが。

もしかして非常勤はフィールドワークではなく「非言語コミュニケーション」?うーん。全部ジェスチャーにする、というのはどうかな。

Posted by: えむ | August 27, 2005 05:55 PM

それぞれでしょうが、人類学のフィールドワーカーにはまったく誰からも教わらないという人もたくさんいます。僕も多分その口です。もちろん先行のエスノグラフィーからは多くを学んでいますが。

非常勤は「人類学2」と「非言語コミュニケーション」です。どちらかというと、後者が悩みどころです。やっぱ、ジェスチャーかな。

Posted by: azuma | August 27, 2005 06:02 PM

ヒント:江戸屋猫八

Posted by: えむ | August 27, 2005 10:21 PM

ご無沙汰です。ご参考までに非言語コミュニケーションは「交換」と考えれば、「贈与」をお勧めします。クラやポトラッチでかなり講義できると思います。僕は12月をクリスマスで締めます。あるいは「婚姻」で構造主義を入れると内容は難しくなりますがそれもアリですね。「儀礼」でシェクナーのパフォーマンス論なんかも面白いかもしれません。

Posted by: barcelo | August 28, 2005 02:18 AM

barceloさん、こちらこそご無沙汰です。お元気ですか?

大変貴重なアドバイス、ありがとうございます。贈与、婚姻、儀礼とくれば、実は非言語コミュニケーションとは人類学の王道なのですね。勇気が出ました。『レッスン』片手に準備してみます。また、ご教授ください。

Posted by: azuma | August 28, 2005 09:06 AM

こんばんは。昨日にはなりますが、こちらに書き込みますね。暗黙知や非言語ときいて、なんかかきこみたくなってしまいました。因果なもんですね。ジャスチャーといえば、野村雅一さんとか参考になりませんかね。あまりプレッシャーを感じさせない程度に先輩いじりです(笑)。調査の中休みで暇な後輩からでした。

Posted by: ニシ向く侍 | August 28, 2005 11:13 PM

調査お疲れさま。

野村雅一氏、早速チェックしてみました。自分が今までカバーしていなかった領域で教えるのは大変だけれど、うまくやれば幅を広げるチャンスでもあると思うので、ちょっとまじめに取り組もうと思います。

また、教えてください。

Posted by: azuma | August 31, 2005 12:44 PM

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