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ラブ・ストーリーとラブレター

"This book is a love story"という一文からこの本は始まる。後に邦訳も出たが、フィールドワーク中に読んだ中でも特に印象に残っている1冊だ。

フィールドで出会った人たち、共に過ごした人たちへの愛情、それについてかかれたエスノグラフィーは、必然ラブ・ストーリーでもある。あくまで一個人である人類学者の愛情についての物語。

僕はラブ・ストーリーを書いたこともなければ、多分ラブレターすら書いたことが無い(多分というのは、恋人や好きな人に宛てた手紙がみなラブレターならばもしかしたら書いたことがあるかもしれないから)。つまり、自分は愛情について書くことが、きっととても苦手なんだと思う。試みればきっと愛情について書いているはずが、いつのまにかその愛情についての的外れな説明を始めるだろうことがわかっているから。それなら、最初から書かない方がいい。どうせ伝えることができないなら、伝えようとしない方がいい。

けれども、博士論文を書きながら、その中に登場するあの人たちのこと、あの人たちが語ってくれたこと、あの人たちがしてくれたこと、それを幸運にも共有することができたこと、そんな1つ1つのストーリを思い出しながら僕は自分がもしかしたら、愛情について書いているのかもしれないという気になっている。それはラブ・ストーリーというよりは、ラブレターに近いだろう。少なくとも書くことに没頭している間、僕は恋をしているみたいで、何とかしてその恋心をあの人たちに伝えようとしているみたいだから。もう少し、その気持ちを当事者以外の人にも感じることができるように仕向けたら、きっとそれはラブ・ストーリーになるかもしれないけれど。

"This book is a love letter"、そんな風に始まるエスノグラフィーが書けたらいい。

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