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物語に一応の決着をつけるために

気がつくと3月も下旬。

偶然、いくつかの終わりや始まりの場面に居合わせることが続く。ずっと続いてきたであろうストーリーの結末にだけ、少しだけ関わったとき、『アヒルと鴨のコインロッカー』に出てきた「誰かの物語のに途中参加する」というフレーズを思い出す。

そう、どんな他者も自分と同じく人生という物語の主人公だという共感は、とても重要だろう。人類学者にとっては、なおさら。誰かの美しい物語に関わる幸運と幸福や、つらい物語に関わる責任の重さ。いずれにしても、途中参加した他者の物語において、脇役としての役割は割り振られる。もしかしたら、自分の物語の主役であることに比べ、他者の物語の脇役であることのほうが圧倒的に多いのではないか。

でも、ときに、どうしようもないくらいに、自分の物語の主役を担う状況に直面するときがある。僕にとって、それは3月23日の学位授与式。

博論の審査である先生が、「20代のほとんどをフィリピンのお化けに費やした」と評したように、他の人にとっては多分どうでもいいことに掛けたあの時間は、他の様々のありえた可能性を犠牲にしながら、いまここにいる僕自身の物語を紡ぎあげている。僕にとって博士号をもらうということは、あの場所のあの人たちと関わりながら綴った自分の成長と非成長の物語に一応の決着をつけることと同じ意味をもっている。

この次には、納得とは程遠い博士論文を著作として出版するという高いハードルが待っている。課程博士なんて何の到達でもなく、免許証みたいなものかもしれない。博士の学位はなくたってすばらしい研究を続ける人たちもいる。そんな様々な留保条件がありながら、当日は自分のこれまでの物語に「一応」のケリをつけるために名古屋大学に向おうと思う。それは、あの時間をかけがえのないものとして大切にしながら次のステップに向かうため。今後の研究と教育に甘えなく、向き合っていくため。新たな物語を始めるため。

実は、同じ日に勤務先の大学の卒業式がある。教員として出席するのが当然なのだが、今年だけは周囲の人たちの理解で自分の学位授与式に出席できることになった。自分が主役の物語をひとまず終えて、来年からは学生たちの終わりと始まりの物語に脇役として参加するつもり。そのためにも、式から謝恩会、追いコンまで完全に参加して徹底的に「卒業」しなければ。というわけで、名古屋の皆さん、当日はよろしくお願いします。

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Comments

先生!感動しました。

博士号取れたんだ。 ドクターコースに行っている友達の中では一番順調だったもんね。
いよいよポスドク?正念場だ。

えー、新しい春を向かえ、物語に決着をつけるため、カナダに移住することにしました。
何年後かに出発するねー。

とりあえず近況報告。

追伸
そのまんま東になって何か変化はありましたか?

Posted by: shinichi | March 20, 2007 11:07 PM

>shinichi

元気かい?博士号とったら、次は著作出版。相変わらずレースは続きます。今度、カナダでshinichiのどんな物語が終わるのか、始まるのか、ゆっくり聞かせてください。そして、もうそのまんまではなく、東国原知事です。何も変わらないけれど、地鶏はおいしいよ。遊びにおいで。

Posted by: azuma | March 21, 2007 12:00 PM

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