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ボラカイ調査

ボラカイ島に来ている。

ロハスからアティアティハンというお祭りで有名なカリボまで、L3と呼ばれる乗合のバンで1時間半。そこで乗り換えて、カティクランの船着場までさらに1時間半。10分ほど船に揺られると、そこは完全に別世界。ヤシの木が揺れる白い砂浜を水着姿の欧米人が闊歩するような、そんな絵に描いたようなビーチリゾート。

ロハスでの調査をずっと続けてきて、一応博論でそれをまとめて、でもまだまだ細かい部分で継続したい調査はあるのだが、それでもやはり目新しさはなくなっている。今回特にそれを痛感した。ロハスでフィールドワークを続けながらも、完全に新しい場所で新しいテーマでもう1つ何か始めたいと考えていたときに、候補に挙がったのがボラカイだ。これまで、人の苦しみや悲しみや妬みなど、呪術をめぐって心の暗い部分ばかりを追いかけてきた僕には、まったく正反対の人の喜びや楽しみや笑いについて、深く考えてみたいという欲求が蓄積していた。そこで、「観光」というテーマに目をつけた。この「楽園」ビーチリゾートでは、どんな幸福が追い求められているのだろうか。あるいは、ここでも不幸に出会うのだろうか。

今回は、その手始めとして、予備調査のつもりでやってきた。テーマは大きくは観光について、その中でもいくつか日本で仕込んできたリサーチプランで進めていけるか、ここ数日で少し歩いて、見て、聞いてみた。新しい調査地で、まずはきっかけやとっかかりを探すことから始めるなんて、修士課程以来で少し心が躍る。その一方で、もう無限には与えられていない時間の制約から、拙速に「何か」を見つけてしまおうとう焦りもある。

これまで僕にとってボラカイは、ロハスでの調査や人間関係に疲れるとフラッとやってきて、数日間のんびりして、また調査地に戻るという癒しの場所だった。それが、今度は調査をする場所になる。それはどういうことか。

ビーチリゾートでの観光人類学なんて、他人がやっている話を聞くと、それはそれはうらやましく感じていたのだが、やってみると意外とそうでもない。この非日常ムードが蔓延する場所で水着姿の観光客の横をすり抜けながら、あえて一本奥の通りやホテルの裏に迷い込んだり、楽しそうに昼からビールを飲んでいる人たちを横目に、必死になにやらノートに記録したりしているのは、自分がいかにもこの場所に帰属できていないようで違和感がある。ただ、そんな僕の「観光」できなさは、もしかしたらこの島にいるもう1種類の人たち、すなわち「住民」の観光客に対する感覚にまだまだ遠くても少しだけ近づいたのかもしれない。いや、いけない。ハレの場所に生起する幸福を探しにきたのに、気を抜くと結局日常や生活に引っ張られている僕がいる。

もう1つの問題は、言語だ。ロハスでは完全にイロンゴでコミュニケーションができたのだが、この島では、住民はアクラノン、近隣から働きに来ている人たちはイロンゴ、遠隔地からの出稼ぎ労働者やフィリピン人観光客はタガログ語、そして外国人は英語(および各国言語)という調査には最悪の多言語状況にある。イロンゴと似ているとはいえ、アクラノンを一から勉強するには時間も気力も必要だ。とりあえず、コミュニケーション可能なイロンゴとタガログと英語を交えて、各集団にアクセスしていくしかないか。

明日は、日本人のダイブショップ店員にインタヴューのアポが取れている。調査に日本語が使えるのは、気楽でいい。何かとっかかりがつかめれば。

今日のおやつは、市場で買ってきたバナナとマンゴスチン。フィリピンではやっぱり、フルーツでしょう。

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Comments

「目新しさがなくなっている」感覚のただ中で、まだずるずるこれまでのテーマを引きずっている私です…。先に進んでいけるのは大事なことだと痛感させられます。

ボラカイですか。先日某所にてタガログ語入門の授業をして、そこでボラカイの写真を見せたら、ひとりボラカイ好きが参加者の中に混じっていて、昔とどれほど変わったか、砂の色が黄変していて海の汚染がどれほど進んでいるか、など一渡り話してもらったりしました。一皮めくると、いろいろありそうですね。

でも、昨年のクリスマスは、確かに台風の爪あとなども見つつも、基本的には癒されに行ってしまった私たち(ビコールでの緊急救援でくたびれた妻と同僚2名を加えて)でした。

そのときも日本人の女性ダイブショップ店員に会いました。もしかして同じ人かな?

それにしても、既に日本語もあわせれば4言語! 私はタガログ語圏以外は今のところ避けてしまっている状況です…。思い切って、次なるテーマに飛び込んでいようかな、とチャレンジを受けた今日のDiaryでした。

Posted by: Sammy | August 29, 2007 08:40 AM

>Sammyさん

コメントありがとうございます。軌道に乗るかどうかわかりませんが、ボラカイを少し真面目にやってみようという気になり始めています。

ボラカイ好きの学生さんのお話、僕もぜひ聞きたかったです。僕が始めてフィリピンに来た98年からすでに、「ボラカイは(昔と比べて)汚されてしまった」というエントロピー的な語りは継続しています。むしろボラカイに、なぜそれほどまでに「美しい島」的な欲望が投影されるのか、不思議に感じ始めています。もちろん、確かに環境問題はあるんでしょうけれど。

女性ダイブショップ店員、何人か知っています。今回僕がインタヴューしたのは、自分は潜らない人ですよ。もしそうなら、共通の人ですね。

ところで、先日ご発表された、シン枢機卿についての研究も素晴らしく目新しいものだと思いますよ。Sammyさんであれば、問題なくまとめ上げるだろうと誰もが思ってしまうあたりは、予定調和なのかもしれませんが。成果を楽しみに待っています。

Posted by: azuma | August 29, 2007 10:38 PM

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