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自己と他者、プラス社会

ある研究会にて。

ここ数年、隣を一緒に歩いたり走ったり休んだりしてきた仲間たちの多くは、僕も含めある程度安定したポジションにたどりつき始めている。それは、数年前には到底予想もつかなかった状況で、みんなの身なりや雰囲気のあまりの変わらなさをほほえましく思いながら、自己と他者に対して為すべきことや負うべき責任など、社会的な状況の変化に対してはシリアスでなければならないと痛感する。

「社会的なもの」に対してとても敏感でありまた誠実である友人の姿を見ると、どうも鈍感なのか目をそらしているのか、今あるべき状況にはまりきれていない自分を恥ずかしく思う。数年前には素直に、「研究者としての自分の資質にはすごく不安がある」とか「教員なんて本質的に向いてないんだよね」とかぼやいていたけれども、どうも最近はそうやって思っていることを口に出すことにすら罪悪感を感じてしまっている。研究への厳密な態度、職務への忠実と忠誠、服装とか髪型、あと向上心を持ち続けるとか根本的なこと。

そして、二次会の居酒屋でついつい口に出してしまう。「みんな、どうやって続けているの?」って。自分の人生や生活の大きな流れの中に、いかに研究や教育やその他諸々の仕事を組み込んで、モチベーションを失うことなく、前と上を向いて継続していくことができるのか?そんな子供じみた下らない悩みというか愚痴みたいな問いに真剣に答えてくれる仲間に感謝する。聞いて答えてという何気ない応答が、勇気までは与えてくれなくても「覚悟をする覚悟」に向かわせてくれる。続いていくだろう、そして続けていくだろうという覚悟のための覚悟。あとは下らない話や賑やかな笑い声や喜ばしい報告に救われ癒され、夜が更けていく。

「なりたい自分」や「ありうべき自分」への到達や達成というイデオロギーを素直に身にまとっていた時期はとっくに過ぎて、いかに自己と他者の差異や摩擦を楽しみつつサヴァイブするかだけに専心していたら、そこに大いなる「社会的なもの」が覆い被さってきた、そんなイメージ。そんな当たり前なことに行きつくまでに、時間がかかりすぎている自分よ、頼む早く成長してくれ。

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Comments

某南の島で繰り広げられる日常的な社会関係にそれなりの位置を維持していた私は今、家で繰り広げられる日常的な社会関係にそれなりの位置を維持しようと悪戦苦闘中です。

安定したポジションですが、私は大学院に入院した段階で捨ててます(笑) 国や財団がばら撒く金をいかにふんだくるかを生業にしている研究者って、実にヤクザな存在だと思います。百歩譲っても絶対に堅気じゃない(爆)

Posted by: ノリタケ | July 20, 2010 06:56 PM

>ノリタケさん

僕も同じく、某南の島での社会関係維持の経験を、某組織や某家族の社会関係維持に役立てようと苦心している真っ最中です。

が、うまくいきません。あの頃の方が社会関係維持が上手だったのか、それとも今の場所の方が手ごわいのか…。

Posted by: azuma | July 20, 2010 07:34 PM

維持すべきポジションがなかったからじゃないですか 博士課程なんてむしろ維持してはいけないポジションですからね(笑)

・・・だから私は無職になりました(爆)

Posted by: ノリタケ | July 21, 2010 04:30 AM

そうそう。昇進+栄転(?)おめでとうございます。大いなる祝福と若干の羨望を込めて

Posted by: | July 21, 2010 03:47 PM

>ノリタケさん

2つのコメント、どちらもですよね?

ありがとうございます。いいことばかりではないですが、がんばります。

Posted by: azuma | July 21, 2010 04:57 PM

真摯に取り組んでいるみたいですね。とりあえず、ちょっとは追いつきたいですねえ!がんばるわあ!

Posted by: masa | July 22, 2010 10:55 PM

>masa

いえいえ、8月のフィリピンに向け、完全に逃避ムードです(笑)。

Posted by: azuma | July 23, 2010 03:53 PM

私にとってはまさにAzumaさんやフィリピン研究の友人たち、先輩達が、「子供じみた下らない悩みというか愚痴みたいな問いに真剣に答えてくれる仲間」であり、「覚悟をする覚悟」に向かわせてくれて、幸せな夜に導いてくれる存在ですよ。言われなくてもわかっておられると思いますが、Azumaさんは受け身ではなくて、ご自身もつねに「社会的な」メッセージを発しておられると思います。
 「頼む早く成長してくれ」って言葉はいいですね。いろいろ、なんだか、言葉にしてしまったら当たり前で陳腐にみえることばかりですが。
 もうマニラではお会いできないと思いますが、近いうちに日本でお会いできるのを楽しみにしております。

Posted by: saging | July 25, 2010 03:26 PM

>sagingさん

何とか投げ出さずにやっていけるために仲間と語らっていたら、その語らいのうちに社会性や公共性が立ち現れてきたというところでしょうか。いずれにしても、他者との語らいは徹底的に不可欠で、いとおしいものだと強く思います。

僕は8月9月はフィリピンですが、今年は会えなさそうですね。近いうちに、日本で。お互いがんばりましょう。

Posted by: azuma | July 26, 2010 12:30 PM

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